「楽しんでくれたん?」 彼はそう言って、蒼の顔にかかる手を掴む。 蒼はそれを振り払おうとするが、彼は離してくれない。 「そんな泣くなや。 俺たちのライブには涙はいらへんで?」 優しい彼。 だけど、蒼が顔を上げると彼を欺くことになる。 それだけは駄目。 やっぱり、蒼の言う通り、蒼はただのファンでいいんだ。 密かに心の中で思うだけの、ファンでいいんだ。 神様、どうか…… だけど、あたしの祈りは通じず、 「兄ちゃん、顔上げな」 強引に蒼の顎を持ち、ぐいっと上げた。