「じゃあね」
二年生の階に着くと、お互いスタスタと自分のクラスに戻る。
これで何回目かな。
楽しくないお昼を過ごしたのは。
「あ。白石おかえりー!」
「ん。………ひとり?」
高崎は、日向の席に座って、ニコニコしている。
「ははは…そうなんだよね」
「日向は小夏と昼ごはんだもんねー…。しょうがないって」
「まぁな、そこは俺も我慢しなきゃね」
「なんならあたしが一緒に食べてやるよ」
「お前、彼氏居るだろ〜」
彼氏、か……
「あはは、そうだった」
あたしは楽しく笑い飛ばす。
お弁当箱を自分のカバンに押し込むと、あたしも居場所がないので、仕方なく小夏の席に座った。
気を紛らす為に、らしくもなく次の時間の予習をするフリをする。
「白石、なんかあったの?」
「……は?」
あたしもビックリした。
聞いて来るタイミングが偶然過ぎて。
「いや…ゴメン。なんかいつもと違うから……」
“いつもと違うから”
いつものあたしはどんな顔をしているんだろう。
「高崎にはいつものあたしが分かるの?」
あたしが言うと、高崎はちょっと困ったような顔をしてから、いつもの様に笑った。
「まあね〜。いつも見てるからさ」
なんだそれ。
「気持ち悪い」
「ははっ、ゴメンって」
一緒にいるひとを、巻き込んでしまうような雰囲気で、高崎は笑うんだ。
笑顔も、
声も、
見ているだけで、優しいって伝わってくる。
あたしも、高崎みたいな人になりたいな。
高崎の明るい笑顔が、何時もより痛く心に染みた。


