何で――――
響輔さんが………
ううん
理由なんてどうだっていい。
これで安心―――
「きょ………すけさん……」
思わずまばたきをすると、思いのほか安堵したのか―――ぽろり……あたしの目から堪えていた涙の粒が零れ落ちた。
「どうされました?」
響輔さんは訳が分からずと言った感じで急に泣きだしたあたしをおろおろと見下ろしている。
「わか……ない。痴漢……」
あたしがT字路の向こう側を震える指で指さすと
「痴漢?」
響輔さんはT字路の向こう側をちょっとのぞくようにあたしの背後に視線を配り
目視で確認したのち
「逃げて行ったようです。もう大丈夫……」
と言ってあたしの両肩を優しく抱き止めてくれた。
そのぬくもりに、体温に……すっごく安心できた―――
もぅ大丈夫
―――――
―――
それから数分後、泣き止んだあたしに響輔さんは質問を投げかけてきた。
「ところでどうしてここへ?」
「響輔さんこそ。あたしは―――………エリナのお母さんに呼ばれて……」
「新垣さんの?」
響輔さんはほんの少し眉を寄せると、小さく吐息をつき
無言であたしの腕を取ると歩き出した。
急に手首を握られてドキッとした。
響輔さんの手は―――いつかあたしの部屋で触れたときより少しだけ体温が高くて、その温度に安心もできた。
けれど今はその力強さが少しだけ―――怖い。
「送っていきます。今すぐここを離れて」
突如言われて、近くに停めてあった響輔さんの………一度だけ見たことがある大きな大きな黒いバイク―――
そこまで連れて行かれて、ズイとヘルメットを渡されあたしは戸惑った。



