着替えをして簡単に髪だけをブラシでとかして、あたしは慌てて家を飛び出た。
エリナの家がある最寄り駅まで電車で移動して三十分。
駅からは割と分かりやすい道だったから電話だけの説明でも十分だった。
夏の太陽がサンサンと降り注ぐ中、汗の粒を浮かべながらあたしは目的地へと急いだ。
―――
異変は駅からの一本道を歩いているときに気づいた。
真夏の真昼間だと言うのに、細い道は誰も通ってない。
近くの電柱に白黒の張り紙がしてあって、「痴漢注意!」と注意書きがしてあった。
夜になると歩くのが少し怖いかなぁ。
以前、あたしの近所で朔羅と居るとき男たちに襲われかけたことがある。
そのトラウマもあってか、少し神経質になってるのかな…
あのときは朔羅も居たし、龍崎くんも助けてくれた。
けど
今は一人―――……
そんなことを考えてると
あたしのサンダルの音にかぶせるように、背後から靴音が聞こえてきた。
神経過敏になってるのかな……
ただ方向が一緒なだけかもしれないし―――
ちょっと振り向くと、数十メートル先に黒い上下のジャージにキャップ姿と言う男の人がポケットに手を突っ込んで歩いていた。
近所の人かな……
い、家に帰る途中とか…
妙な不安を打ち消すためあらゆる想像をしたけれど、あたしが歩を早めるとその背後の人物も早歩きになった気配がして
電柱に張られた‟痴漢注意”の文字が頭の中を過る。
や……やだ!



