「あらやだ、乱暴ねぇ」

「何嘘ついているんだよ、奈々子!」

「嘘ぉ?」

「郁美に嘘ついただろ!
俺とお前が付き合っているって!」

「あ~そのこと?
まぁ、それに関しては謝るわ」

「何で嘘ついたんだよ!」




その瞬間、俺は奈々子にビンタされた。

日が暮れ始めた空に、乾いた音が響いた。




「あの子が傷つくのを見たくないだけよ」




郁美が・・・傷つく?





「あのまま輝流と付き合えば、瑛士の二の舞を演じる結果になるわ。
それだけは阻止したくてね」

「・・・瑛士の、二の舞を演じる、だと?」

「そうよ。
あたしはね、二度と瑛士のような人を作りたくないの。
苦しむのは・・・瑛士だけで十分」

「・・・」

「輝流は阻止できると思うの?
玉井郁美を傷つけない自信がある?」

「・・・」

「あたし、あの子まで傷つけたくない。
だから輝流はあたしと付き合っているって嘘をついた。
あの子を守るためだから、承諾してよね」

「・・・奈々子」







俺はゆっくりと、

奈々子の言葉に、







うなずいた。