雨の残照【短編】

「博士がそう言っていました。私にはよく解りませんが、0%でなければ何かが含まれているということです」

「博士ってだれ?」

「わたしの父です」

 博士……そんな言い方をするってことは、

「血はつながっていないの?」

「はい」

「そう、なんだ。お母さんは?」

「いません」

 それじゃあこの人は、血のつながった両親がいないってことじゃない。

 博士という人は、何かの可能性に懸けたんだろうか。

 だからこうして、彼はここまで成長出来たんだろうか。

 変な喋り方だけど、とても穏和な人のように思う。

 でも、私はこの子を育てる自信なんてない。

 そりゃあ、誰でもそうかもしれないけど不安で仕方がないよ。

 女性は何も言えなくなり、青年をじっと見上げていた。

 青年はパンツのポケットに手を入れて何かを取り出し、彼女の前に握った拳を突き出す。

 なんだろう?

 彼女は左手を広げて差し出すと、手のひらにぽとりと小さなものが落ちてきた。