「うるさい……。何にも知らないくせに何なのよ。ふざけないでよ」

 青年の気味悪さよりも、気遣うような言葉が許せなかった。

 たったいま出会っただけの奴が、知った風なことを言わないでよ。

「胎児にどんな影響があるか解らない? だったら、もっと触って欲しいくらいだわ」

 どうせ産む気なんてない。

「何故です」

「決まってるでしょ、父親がいないからよ」

 会社の上司だった人は、私を置いて他の人と結婚を決めてしまった。

 別れてくれと切り出されたのはつい先日のことだ。

 だから私は有給をとって、会社を辞めようかと悩んでいた。

 妊娠が解ったのも彼と別れてからだった。

 今更、私を捨てた人に何もしてほしくない。

 だから、いまある貯金で──