「あのね、姫子が瀬戸先輩に抱いてる感情は愛情なんかじゃないの。それを同情って言うの」


アカネがハッキリとした口調で言い切る。


「同情?」


「そう。先輩の親が離婚して『可哀想な伊織君』を自分が何とかしてあげなくちゃって思ってるだけ。長年一緒に過ごしているし、情も思い出もあると思う。だけど、どちらかをきちんと選ばないと、全部だめになるよ」


「そうだね……」


「たまには自分の気持ちを最優先に考えなって。誰かに恋をするってことは、誰かを傷付けることもあるの。それは、仕方がない事なんだよ」


「自分の気持ちを最優先に……かぁ」


「姫子、アンタは優しすぎるの。だけどね、その優しさが時に人を傷付けることにもなる。今だってそうだよ?」


優しさが……人を傷付ける。


アカネの言葉が胸に突き刺さる。