「あの客、何だって?」
「チェックのシャツのLはないかって聞かれて調べたんですけど、在庫切れでした。取り寄せするか聞いてみようと思っているんですけど……――」
「分かった。アンタは他の客に回って」
「……え?」
小林さんは当たり前のようにそう命令すると、あたしの腕にあるチェックシャツをひったくるように奪い、お客さんの元へ向かった。
そして、何を思ったのか小林さんはMサイズの服をお客さんに着させてこう言い放った。
「Mでピッタリですね~!お似合いですよ~。この色使いって今季ものすごく流行ってますよね」
「いや、でも少しきついかなって。Lサイズあったのかな?」
「Lだとお客様には大きめだと思いますよ。それにほら、ダボダボのシャツはいまいちですし。本当によくお似合いですよ~!!それに、Mサイズの在庫、これでラストです!」
小林さんの口調に圧倒されているのか、男性はシャツを脱いでしばらく考え込んだ後、そのままレジへ向かった。



