「姫子……?どうした……?」 「ねぇ、伊織君」 「ん?」 「さっき、あたしに無理やりキスしたり……押し倒したりしたのは……あたしのことを突き放すため?」 「違うよ。あれが俺の本性だから」 伊織君は否定しているけれど、きっとそうじゃない。 『俺が弱さを見せたら、きっと姫子は一条君への気持ちをあきらめて俺のところへ来る。そんな気がしたから』 伊織君のさっきの言葉が気にかかった。 伊織君のさっきの強引な行動がもしもあたしを突き放すためだったとしたら……――。