「姫子って昔から困ってる奴見ると放っておけないだろ?俺が弱さを見せたら、きっと姫子は一条君への気持ちをあきらめて俺のところへ来る。そんな気がしたから」
「伊織君……」
「俺、多分もうすぐ引っ越すことになると思う。だから、姫子とは今まで通りの関係でいたい。このまま気まずくなってしゃべれなくなって姫子と離れるのはつらいから。だから、また幼なじみに戻ろう」
伊織君は優しい笑みを浮かべてあたしの頭をポンポンッと叩いた。
「おばさん、姫子が帰ってこないから心配してるだろ。早く帰ろう」
スッと立ち上がった伊織君。
あたしはすぐに立ち上がることができなかった。



