「最近、たまに伊織君が夕飯を食べにうちに来てたでしょ?あれも、私が呼んだのよ。一人で家のことをやりながら学校に行くのは大変でしょ?だから、夕飯ぐらいはうちで食べなさいって。そうしたら、伊織君『悪いから』って断るのよ」
お母さんの言葉が重たく胸にのしかかる。
「姫子、彼氏ができたんでしょ?伊織君が言ってたわ。『俺が姫子の家に出入りして、姫子が彼氏に誤解されたら悪いから』って。でもね、お母さんが無理言って伊織君を誘っていたの」
あたしがバイト先で倒れたあの日、伊織君がうちから出てきて海星君と鉢合わせになった。
あの時、海星君に挑発的なことを言う伊織君に内心ムッとしていた。
だけど、本当は気を遣ってくれていたんだ。
あたしが海星君と伊織君の関係を誤解されないように。
必死で我慢してくれていたんだ。
だけど、もう我慢の限界だった。
だから、あの時伊織君は……――。



