今思えば、伊織君とは今まで一度もケンカなんてしたことがなかったな……。 きっとそれは、伊織君があたしよりも大人だったから。 いつもあたしのワガママをきいてくれていたから。 お互いが言いたいことを好きなような言い合っていれば、いつかはケンカになる。 だけど、伊織君は違った。 いつもあたしの意見に合わせてくれた。 自分の気持ちを隠し続けてくれた。 だから、あたしはずっと伊織君と兄妹同然の関係でいられたんだ。 ずっとずっと、伊織君が我慢してくれていたから。