あたしは、いつも伊織君に励まされてばかりだったんだ。
今日……初めてそれに気が付いた。
それだけじゃない。
伊織君はあたしの知っている幼い頃の伊織君なんかじゃなかった。
あたしは……今までずっと伊織君の何を見てきたんだろう。
伊織君の背中に腕を回すと、体の厚みに驚いた。
伊織君は……男の子だったんだ。
背だって昔はあたしとそんなに変わらなかったのに。
声だって高くて、腕だって細くて。
だけど、今は背も高くなって体もがっしりして声だって低くなった。
今までどうして気付かなかったんだろう。
どうして……伊織君の気持ちに気付いてあげられなかったんだろう。



