無口なカレとの甘い恋


あたしはそっと伊織君の背中に左腕を回してトントンっと優しく叩いた。


昔、あたしが伊織君にしてもらったみたいに。


『姫子、もう泣かないで。大丈夫だから』


アスファルトの上で転んで膝を擦りむいた時も。


デパートで迷子になりそうになって大泣きしていた時も。


男の子にいじめられて悔しくてたまらなかった時も。


どんなときだって、伊織君はあたしの傍にいてくれた。


そして、いつもあたしを励ましてくれた。


『大丈夫だよ』って。