「俺のこと、一回でいいから男として見てよ?姫子、ちゃんと俺と向き合ってよ」 「伊織君……」 「俺、姫子無くしたら……何も無くなる……」 伊織君はそう言うと、あたしの手首をギュッと掴んで自分の方に引っ張った。 「……っ」 トンッと伊織君の胸に顔をぶつけたあたし。 伊織君はそっとあたしの肩におでこを乗せる。 「少しだけこのままでいさせて」 伊織君の声がかすれている。