「知ってるよ。姫子が一条君が好きだってこと」


伊織君が目の前にいる。


緊張が一気に高まる。


あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


「だけど、俺も姫子が好きなんだ。どうしようもないくらい、好きだ」


伊織君の声が震えている。


あたしは恐る恐る顔を上げた。


「どうしたら、忘れられんだろ?何度も諦めようとした。だけど、諦められない。姫子以外の女と遊んでも全然ダメなんだ」


「っ……」


喉の奥に言葉が張り付いてうまく声にならない。


目頭が熱くなって、唇が震える。