「姫子、遅い」 部屋のドアを開けると、ベッドに寝転んで携帯をいじっていた伊織君が開口一番そう言い放つ。 「伊織君こそ、何であたしの部屋にいるの?」 あっ、今のちょっとトゲのある言い方になっちゃった。 「姫子にそういう言い方されると、傷付くんだけど」 伊織君は体を起こしてベッドサイドに腰かけて、真剣な瞳をあたしに向けた。 「ごめん。ごめんね、伊織君」 茶色くて丸い澄んだ瞳に見つめられて思わず目を反らす。