無口なカレとの甘い恋


本当だったら、ここは気持ちをグッとこらえて家に帰るところなんだろう。


だけど、あたしには無理だった。


「おい、姫子。お前、聞いてんのか?」


やっぱり、風邪をひいてるんだ。


低い声がいつもよりかすれてる。


いつも、海星君の言葉を一語一句聞き逃すまいと聞いているあたしには分かる。


このまま帰るなんて、無理だ。


海星君があたしを呼んでいるんだもん。


例え嘘を吐かれたとしても、あたしは海星君を信じてる。


信じたいんだ……――。


ダメだ。会いたい。


海星君に会いたい!!!


「今すぐ行く!!飛んでいく!!」


「は?」


電話を切ると、あたしは元来た道を引き返した。