声をくれた君に



次の日の昼休み。

私は小田さんに指示された通り、高橋くんとふたりで屋上に向かった。

「いいか、昨日練習した通りだからな。

小田の方に斜め向きに体を向けて、お前が背伸びして俺に顔を近づける。

ちょっと顔を右に傾けたらたぶんいい感じになるはずだ!」

私は高橋くんに力強く頷いた。

昨日話合った作戦。

それはふたりで協力して、キスをしたように見せかけることだった。

屋上に出ると、風が強く、凍えてしまった。

「さ、さむ…

櫻田ー、大丈夫かー」

私はうんうんと首を縦に振った。

「つーかお前って、ほんとは何の変哲もない、ふつーの女だよな」

私はよく意味がわからなくて高橋くんの方を見た。

「声が出ないのと、ちょっと見た目がギャルっぽいこと以外は

特にふつーだなって思って。

顔もまあ可愛い方だし。

悪いやつじゃないみたいだし。

その髪型も、結構似合ってるぜ」

高橋くんはニッと笑ってみせた。

(高橋くんって…本当にいい人だったんだ…)

私はクラスのみんなを敵に回して、ひとりひとりのことなんか何も見てなかった。

確かに私をいじめてたことに変わりはないけど

そうやってひとりひとりと向き合っていけば、何か変えられるのかな

小田さんともうまくやっていけたり、しないのかな…