声をくれた君に



その日の昼休み、私は小田さんに空き教室に連れ込まれていた。

そこには高橋くんもいた。

「なんだよ、小田。

櫻田まで連れてきて…」

高橋くんも状況を理解していないようだ。

(どういうつもりで私たちを連れ込んだんだろう…)

不思議に思っていると、彼女は腕を組んで口を開いた。

「あなたたち、今日から付き合って」

「…は?」

(…え?)

小田さんの突拍子もない言葉を、私も高橋くんも理解することができなかった。

「つ、付き合うってなんだよ。

何しろって言うんだよ」

「別に何もしなくていいわ」

「いや、全然わかんないんだけど」

(私も全然わからないんだけど…)

「作戦は明日決行」

「待って、全然話が見えないんだけど」

高橋くんも完全に困惑しきっているようだ。

「明日の昼休み、佐野くんの前でふたりでキスをしてほしいの」

「き、キス?!」

(佐野くんの前で、他の男の人と…?!

なんでそんなこと…)

「わかってると思うけど、私の言うことは絶対だからね、櫻田さん。

佐野くんのこと、いじめてほしくないんでしょ?」

(それは、困るけど…

好きでもない人とキスなんて…

しかも、佐野くんの前で…)

「それから、櫻田さんから高橋くんにキスをすること、以上!

じゃあまた明日の昼休みね」

そう言うだけ言って、小田さんは先に教室から出て行った。