声をくれた君に



しばらくじっとしていると、佐野くんが手を止めた。

「だれか、大きめの鏡持ってない?」

「私、持ってるけど…」

佐野くんは近くにいた女子から鏡を借りた。

そして私に鏡を向ける。

「どう?」

髪の毛は完全に短く切り落とされていた。

けれど、きれいに整えられた前下がりショート。

(ほんとに、美容院で切ってもらったみたいだ…すごい…)

「俺は…

可愛いと思う」

佐野くんから聞いた”可愛い”の言葉に、一気に頬があつくなるのがわかる。

「余計なことをしたなら悪かった」

彼はそう言って、掃除ロッカーの方へ向かった。

切り落とした髪の毛を集めるつもりだろう。

(どうしよう、また助けられてしまった…

ありがとうって言うくらい、許されるよね…?)

そう思って佐野くんに近づこうとすると、小田さんが教室に戻ってきた。

「え…

何その髪型…なんで…!」

「佐野が切ってたぜ、すげーだろ!」

クラスの男子が興奮気味に小田さんに教えた。

「佐野くんが…?

なんで、なんでいつも櫻田さんなんかのこと!!」

彼女は取り乱したように叫ぶ。

(やっぱり、そうなんだ)

私は確信した。

(小田さんは、佐野くんのことが好きなんだ)