声をくれた君に



私は切られた右側の髪の毛を手で触った。

胸の下まであった髪の毛は、鎖骨ほどの長さになっている。

その上左側は長いままで、なんともアンバランスな髪型だ。

(ウソだ…こんなことあるわけ…

なんで、なんで髪の毛切られなきゃならないの…?)

私は短くなった髪の毛を何度も触った。

クラスの人たちも、みんな驚いた顔をしている。

(どうしよう…)

今度ばかりはどうしようもない。

もう、取り返しがつかない。

そう思った時、目の前に座っていた彼が立ち上がった。

彼は小田さんと同じように、右手にハサミを持っている。

(佐野くん…?)

「その髪、俺が切る」

私は最初、彼が言ったことを理解できなかった。

(…え?

佐野くんが私の髪の毛を切るの…?!)

「大丈夫」

彼は私の耳元でそう囁いた。

(佐野くんの声だ。

私を何度も安心させてくれた声…)

彼は私の髪の毛にハサミを入れ始めた。

するとクラスのみんながそれを見てざわめきはじめる。

「なんか…美容師みたい」

「うん、プロみたい…」

私は佐野くんが切っている様子を見ることはできないが、音でなんとなくわかった。

(たしかに、美容院で切ってもらってる時みたいな音がする…

佐野くんって、何者なの…?)