声をくれた君に



ひとりで教室に戻ると、小田さんが安心したように私を見て言った。

「私の忠告も聞かずに、まだ佐野くんと一緒にいるつもりかと思ったわ」

私の頭に小田さんの言葉はあまり入らなかった。

「安心して、ちゃんと約束は守るから。

佐野くんのことはいじめない」

(よかった

ちゃんと佐野くんのこと守れたんだ)

それだけが唯一の救いだった。

しばらくして佐野くんも席に戻ってきた。

彼は私を見ているような気がしたけど

私は彼を見ないようにした。

(佐野くんと関わる前に戻っただけ。

ただそれだけのこと)

私は自分にそう言い聞かせた。

けれど

(佐野くんがいない時、私どうしてたっけ?

お昼休みはこの席でごはんを食べて…

でもどうやって?

休み時間はヘッドホンで耳をふさいで…

どんな音楽聞いてたっけ?

どうしよう、全然わかんない

佐野くんがいないときのことなんて、全部忘れちゃったのに…)

私はもう一度泣いてしまいそうになるのを必死で堪えた。

(今までなら涙を堪えることだって簡単だったのに

涙の堪え方まで忘れちゃった…)

私は机にうつぶせて顔を隠した。

はじめて小田さんに弱さを見せてしまったような気がした。