声をくれた君に




(佐野くんのために、一生懸命作ったのに…)

私はしばらくその場にひざをついて固まっていた。

(でも、もし私がこれを佐野くんに渡していたら、佐野くんは私の代わりにいじめられていたかもしれない。

だから、これでよかったんだ…)

私は自分にそう言い聞かせた。


昼休み、私はいつものように佐野くんと屋上には向かわず、自分の席でお弁当を広げた。

その様子を小田さんは満足気な様子で眺めている。

(これで、いいんだよね)

でも、彼はちがった。

「おい、櫻田、屋上行かないのか?」

(どうするのが、いちばんいいのかな)

短い時間で悩んだ末、私は佐野くんを無視することにした。

(私は佐野くんを傷つけたりなんかしたくない。

佐野くんのことは私が守る…)

そんな私の決意は伝わらなかったのか、佐野くんは私の手を取った。

「来い」

いつもより私の手を強引に引き、私を教室から連れ出す。

連れて来られたのは、いつも一緒にお弁当を食べている屋上だった。

「なんでシカトみたいなことしてんの?」

私は何を答えていいかわからなくて下を向いた。

「ちゃんとこっち見ろよ」

それでも私は下を向き続けた。