声をくれた君に



「わかったら佐野くんに渡すつもりだったチョコ、早く出して」

私はおとなしくチョコプリンのはいった紙袋を小田さんに差し出した。

「本当に渡すつもりだったのね、櫻田さんのくせに。

今後佐野くんには近づかないでね」

彼女は勝ち誇ったような顔で私の方を見た。

「ほら、早く行くわよ、教室」

彼女は私の手首を力強く引っ張った。

(い、痛い…)

「もしかして痛かった?

ごめんね、櫻田さんが声に出してくれないからわからなくって」

それでも彼女は手の力を弱めることはなかった。


教室に着くなり、小田さんは私の手首を掴んだまま教卓に立った。

「みんな聞いて!

櫻田さんがバレンタインのチョコ渡したい人がいるんだって!」

教室中がざわめきだした。

私はつい佐野くんの方を見てしまう。

彼も私の方を見ていたが、すぐに私は目を逸らした。

「しかもたぶん手作り」

「マジかよ、ウケる」

(小田さんは一体どうするつもりなの…?)

「で、誰のなんだよ、そのチョコ」

(そんなの、佐野くんに決まってる…)

「高橋くんにだって」

「え?!」

高橋くんはすごく驚いていた。

(一番驚いてるのは私なのに…

なんで高橋くんなの?)