「じゃあそろそろ解けたと思うから
んー…櫻田、前でやってくれ」
私はノートを持って前に出て、先生からチョークを受け取った。
ノートに書かれた数式を丁寧に書き写していく。
先生も横でうなずきながら見ていた。
勉強だけが唯一私にできること。
「よし、正解だ。
すごいな、この問題は難しかっただろう」
私の心が満足感でほんの少し満たされた時、小田さんはまた何かを言い始めた。
「先生、櫻田さんが私のノート写しました。
ほら、ここに私のノート」
私の上には、見覚えのないノートが置かれていた。
もちろん小田さんが置いたのだろう。
弁解なんて簡単だ。
私に声があれば。
クラスのみんなが私の敵でなければ。
「そうなのか、櫻田?」
私は小さく首を振った。
それでも人数には勝てない。
「櫻田さん、せこーい」
「自分の手柄にしようとするとか、だめだろ」
「あんな問題が解けるとか、小田も頭いーな」
クラスのやつらはここぞと言わんばかりに必死に主張する。
「櫻田、次からはちゃんと自分で解くんだぞ?
解けなかった時は正直に言うこと」
こうして先生に嘘つきのレッテルを貼られる。
唯一できることさえも、嘘に変わってしまう。
でも私は絶対に負けない。
学校をやめたりなんてしない。
