声をくれた君に



翌日、いつものように学校で授業を受けていると、教室に教頭先生が入ってきた。

「櫻田さん、ちょっと…」

教頭先生は私を廊下に呼び出す。

そのまま誰もいない教室まで連れて行かれ、こう告げられた。

「落ち着いて、聞いてくれ」

「はい…?」

妙な緊張感が漂っていた。

「お母さんが…

お母さんが危篤状態らしい。

今すぐ病室に向かってあげなさい」

「危篤…?」

(危篤ってなに?

死ぬってこと?

お母さんは、もうすぐ死んじゃうの…?)

死という文字が何度も頭をよぎった。

同時に昨日私が言った言葉を思い出した。

『あんたなんか大っ嫌いだ!

今すぐ私の前から消えていなくなれ!』

(本当に消えちゃうの…?)

教頭先生は放心状態の私をそのまま玄関まで連れて行ってくれた。

そこにはタクシーが止めてあって、押し込まれるように乗せられた。

「第一病院まで、お願いします」

教頭先生が行き先を告げると、すぐにタクシーは目的地に向かった。


病院に着くと、私は夢中でお母さんの病室まで走った。

(死なないで

いなくならないで…

何もしてくれなくていい

ずっと病院で寝てくれてていいから

生きててほしい…)

お母さんが生きてる理由なんて私が一番わかってる。

(私にお母さんが必要だから…

いつも笑って、来てくれてありがとうって言ってくれるお母さんが

私には必要だから…)


病室の前に着いて、私は息を整えた。

最期に何を言おう…

私が、お母さんに一番伝えたいこと。

だってこのままじゃ私の最後の言葉は…


私は病室のドアを開けた。