声をくれた君に



放課後、私が帰る用意をして立ち上がると、佐野くんが私に話しかけた。

「今日中に送れ。

じゃ、また明日」

(送る…

どう考えてもメールのことだよね。

ていうか今の俺様感はなんだったんだろう…)

相変わらず少ない言葉でしゃべり、有無も言わさず颯爽と背中を向ける彼。

でも

(今日も”また明日”って言ってくれた。

私がその言葉に元気づけられてるって、わかってるのかな)

私はいつもより急ぎ足で家に帰った。


家に帰るなり私はすぐに携帯を手に取ったが、そこで一旦手を止めた。

(いやいや、気が早すぎる。

でも今日中って言ってたし

今日中っていつのことなの…?)

考えているのも面倒になって、私はメールを打ち始めた。

”櫻田珠李です”

(…以上?

それは失礼すぎるかな?

あ、そうだ)

”教科書ありがとう”

(よし、これで送ろう)

私はそのまま送信ボタンを押した。

携帯を傍に置き、私はふと机の上に置かれた写真を見た。

10年くらい前のものだ。

写真の中の私は、今では信じられないくらいに笑っていた。