声をくれた君に




「…ウソ。

ほんとは昨日ちょっと探した」

(え…)

私は思わず佐野くんの方をじっと見つめてしまった。

「勉強、頑張ってただろ」

(なんでそんなこと知ってるの…?)

「この前数学で難しい問題解いてた」

(でもあれは小田さんのを写したってことになってるはずじゃ…)

私がそう思って不思議そうな顔をしたとき、彼は私の耳元に口を寄せた。

「小田、あんま数学得意じゃないから。

ノート写したっていうのは嘘なんだろ?」

そう言うだけ言って、佐野くんは前を向いてしまった。

彼の低い声は心臓に悪いみたいだ。

バクバクと音を立てている。

(ていうか私の心の声と会話してた?

脳内が読み取れるとか…?

そんなわけないけど)

何から考えればいいんだろう。

何からすればいいんだろう。

佐野くんが私のために教科書を探してくれて

私が勉強頑張っていることを知っててくれて

小田さんではなく私を信じてくれた。

(それにあんなにたくさん話してくれた佐野くん初めてだ…)

やっぱり彼は私が学校に行くことをやめさせてはくれないようだ。

こうやってやめてしまおうと思ってる時、いつも助けてくれるから。

変われるんじゃないかって期待させるから。

(ムカツク…)

私は佐野くんからもらった教科書をぎゅっと握りしめた。

(そういえば今日もお礼言えなかったな。

すぐに背中向けちゃうんだもん)

私は頬杖をついて、彼の無造作に整えられた髪を見上げた。

(やっぱり、くしゃっとしたくなるな)

私の頬は自然と緩んでいた。