「う…寒っ…!」

予想通り、3月の海は寒かった。

冷たい風がふたりの間を吹き抜ける。

「悠梓くんは寒くないの?」

「寒い」

「それはそうだよね…」

私は小さく眉間にシワを寄せる悠梓くんに苦笑した。

「どうしていきなり海に来たいなんて思ったの?」

「俺が一番好きな場所だから」

(そういえば、海が好きだって言ってたっけ)

夏には何度か海辺をドライブしたり、砂浜をふたりで歩いたりした。

秋になってからは、海風が冷たくて、しばらく来ていなかったのだ。

ふと悠梓くんの横顔を見ると、なんとなく強張っているように見えた。

(なんか、今日の悠梓くん変…

私まで緊張が移りそう)

そんなことを考えていると、悠梓くんが私の正面に立った。

「俺が一番好きな場所で

俺が一番好きなあんたに

言いたいことがある」

「え…」

いつも以上に真剣な表情。

好きというストレートな言葉に、胸がドキドキと高鳴る。