「聞いてるのか?」

「ひゃいっ!」

さっきよりも低い声で囁かれ、私はついにノックアウトした。

「ふっ、なんだよひゃいって」

悠梓くんは肩を揺らして笑っている。

「だ、だって、こんな教え方おかしいよ!

集中できるわけないじゃない!」

「コラ、俺は先生だろ?

そんな口の聞き方していいのか?」

「さっき先生は嫌って言ってたでしょ!」

「うるさい口だな。

俺が黙らせてやる」

そう言って私の唇を彼のそれで塞ぐ。

「後ろからっていうのも、悪くないな」

「もう、変な発見しなくていいよ…」

「気に入った、もう一回する」

「えっ?!」

彼は私が抵抗する暇も与えず、もう一度唇を塞いだ。

「佐野先生のばか…」

「そう言うわりには、満足そうな顔してる」

(だって、ほんとは嫌じゃないなんて

悠梓くんには絶対ナイショ…)

「ほら、勉強するぞ」

「え、ええっ?」

「まだ足りないのか?」

「た、足りてる、足りてます!

早く教えてください!」

「ハイハイ」

結局その日、私はなに一つ勉強にならなかった。

☆『evening shower』end ☆