声をくれた君に



「な、何をいきなり…!」

「だって、顔が近かったし」

「そんなの理由にならないよ!」

(こんなの、心臓によくない…!)

すると、悠梓くんは不満そうな顔をした。

「嫌なのか?」

「え?」

「俺にこういうことされるの」

私は慌てて首を振った。

「う、嬉しいよ!とっても!

でも、なんていうか、いきなりなのは心臓に悪いというか…」

「じゃあ予告すればいいんだな?」

「え?!」

「するよ?」

「う、うん…」

私は恥ずかしくなりながらも、きゅっと目を閉じた。

が、いつまでたっても悠梓くんの唇は触れない。

(ま、まだかな…)

私は不安になって、そっと目を開けた。

その瞬間、意地悪に口角をあげて唇を押し当てる悠梓くん。

「あんたが恥ずかしがってる顔、すげーよかった」

「なっ…!

もう、ばか!鬼畜!ど変態!

もーっ!」

私はたまらず悠梓くんの胸をポカポカと叩いた。

「ヨシヨシ」

悠梓くんはそんな私の頭を撫でた。

(もう、予告されてもされなくても、結局心臓に悪いよ…)