声をくれた君に



次の日、学校に来ると、いつものように机がなくなっていた。

いつものことだ。

当たり前のことだ。

(ううん、私ちょっとだけ期待してたんだ。

何か変わるんじゃないかって)

私はひとりで机を探し始めた。

まわりからはクスクス笑う声。

なんとか無表情を貫いた。


今日はチャイムが鳴る前に机を見つけた。

隠されていたのは女子トイレの中。

机を自分の席に運んでくると、周りの人たちが私に声をかける。

「その机臭くない?」

「匂いうつるからこっち持ってこないでよ」

「どけよ、邪魔だな」

(うるさいな…

トイレなんてみんな毎日使ってるくせに)

私にできるのは、そう頭の中で思うことだけ。

(私に声があったら、今この場で言い返せてたかな。

それとも

声があったら、いじめられることなんてなかったかな)

それでも私に声なんて必要ない。

私は椅子に座り、担任が来るのを待った。