声をくれた君に



「それはない」

悠梓くんは私の鼻をむぎゅっとつまんだ。

「い、痛いよ、そのクセやめて!

ていうか声に出てた?!」

「顔にうるさく書いてある」

「う…」

(そういえば悠梓くんは、私のこと何でもお見通しなんだった)

いつの間にか女子たちの視線は、私に集まっていた。

(え、ど、どうしよう…)

「さ、櫻田珠李です、よろしく…ね」

(わ、沈黙だ…!)

「あれ、全然怖くない!」

「え?」

「しゃべったら普通なんだね!」

「髪染めてるし、スカート短いし

なんか怖い系の人なのかと思ってたー」

「私、加藤桃佳!」

「うち本田由梨!」

「吉田愛菜でーす」

次々と私に自己紹介をしてくれる。

「なんて呼ばれてるの?」

「サクちゃんって呼ばれてたよ」

「何それ、可愛い!

じゃあ私もそう呼ぶ」

「私ももって呼ばれてるから」

「うちはそのまま由梨ー」

(よかった、なんかうまくやっていけそう!)

そのあとも、悠梓くんの周りに集まってくる女子たちと、どんどん仲良くなることができた。

(悠梓くんが人気者で、ある意味得した…)