「でも、お父さんすごい優しそうだった。

いい人だった」

「それはもちろん!

私のお父さんですから」

私は悠梓くんに笑って見せた。

「そうだな。

でも、お願いしましゅって言われた時は、ちょっと笑いそうになった」

「あ、ひどーい!

お父さんに言っちゃおー」

「わ、悪い、それだけはやめてくれ」

(すごい慌ててる、可愛い…)

「あはは、冗談だよ!

気をつけて帰ってね」

「ああ」

「それじゃあまた」

「待って、最後にもう一回だけ」

「え?」

彼は私の顎をくいっと持ち上げ、素早くキスをした。

「も、もう、お父さんに見られちゃうよ」

「だから速いのにした」

「なるほど…」

(うーん、なんか物足りない…)

私は彼のマフラーを掴んで引き寄せ、彼よりも長く口付けた。

「っ…!

ば、ばか、こっちはガマンしたのに…」

「だって、なんか足りなくて…」

「あんた、たまにすごく大胆だよな」

「そうかな?」

「無自覚って怖い」

「うーん…」

「まあいい。

暇な時は連絡する」

(あ、私が言ったこと、覚えててくれたんだ…)

「うんっ!」

「じゃ、今度こそまたな」

「またね、バイバイっ!」

私は大きく手を振って彼を見送った。