声をくれた君に



教室全体を掃き終わってゴミを集めていると、佐野くんがちりとりを持って私の目の前にしゃがんだ。

(どうして一緒に掃除なんてしてくれたんだろう…

やっぱりちょっと気になる。

もしかして何か企んでる?

でもそういう人には見えないし…)

私は佐野くんにそう訴えかけるようにじっと見つめた。

「ん?」

(あ、気づいた)

私は佐野くんに手のひらを向けて待てのポーズをした。

カバンからノートとペンを取り出しす。

”どうして一緒に掃除してくれたの?”

その文字を読むと、彼はスッと立ち上がった。

そして自分を指差す。

(…俺?)

今度はほうきで掃く真似をしてみせた。

(掃除…?)

次に私を指差した。

(私?)

再びほうきで掃く真似をした。

(掃除…

俺、掃除、私、掃除…??

ていうかなんでジェスチャー?

あ、もしかして!)

私は再びペンを握った。

”耳は聞こえます”

「あ、そっか」

彼は冷静に納得した。

(え、天然…?)

そして何事もなかったかのように話し始めた。