声をくれた君に



ふと窓の外を見ると、すっかり暗くなっていた。

「ねえ、お父さん、お腹空かない?」

「そうだな。

どこか食べに行くか?」

「ううん、私作るよ。

この1年で、すっごく上手くなったんだからね!」

「そっか、楽しみだな」

私はエプロンを身につけ、キッチンに立った。

(誰かのためにご飯作るのって、久しぶりだ。

すごいやる気出る…)

このごはんを待っててくれる人がいる。

お父さんがいる。

声を出すことができる。

取り戻した当たり前の日常。

でもそれは、紛れもなく幸せなことで

かけがえのない大事なこと。

(もう失ったりしない

誰も傷つけたりしない

今ある当たり前を大事にしよう)

「珠李、今日のおかず何?」

「できあがるまでナイショー!」

「お前、お母さんと同じこと言ってくれるなー」

「お母さんの娘ですから!」

私はニッとお父さんに笑ってみせた。