声をくれた君に



「ほら、せっかく声が出せるようになったんだ。

言いたいこと言えよ」

「そうだね」

”絶対聞こえるから”

いつか彼が私に教えてくれたこと。

(うん、私もそう思う。

悠梓くんのこと、全部信じてる)

「お母さん…

お母さん、ごめんね、たくさんヒドイこと言って…

傷ついたよね、そんな顔してた。

それなのに、最後は私のこと、ちゃんと笑顔で見送ってくれたよね。

お母さんはほんとに強い人だった、カッコよかった。

だから、いつもお母さんを思い出そうとしたら絶対笑ってるんだ。

それに、いつも私がお見舞いに行ったとき

珠李って名前呼んでくれたよね。

ありがとう、嬉しいって、絶対言ってくれたよね。

私、その言葉、ほんとに、本当に嬉しかった。

それなのに私は、お母さんを傷つけることしかできなかった。

ごめんなさい…」

私はそっと墓石に触れた。

「今更遅いけど、でもきっと聞いてくれてるよね。

お母さんのことだからきっと許してくれるんだよね。

だから聞いててね…