「そう気を落とすなよ。飯食う?姉ちゃんが昨日の内に仕込んでおいたやつ」

「みんなは?」

「ガキどもはもう寝てる。櫂は自主練、早苗は部屋で勉強」

樹くんの言葉に甘えて食卓に招かれる。

久し振りに食べた佐藤家の味を噛みしめていると、樹くんがしみじみと言った。

「鈴木ってマジで姉ちゃんが好きなんだな」

「……そうだよ」

俺は初めて佐藤家の人に対して自分の気持ちを口にした。

一度口にしてしまえば、あとは愚痴が零れるばかりだ。

「佐藤さんは俺のことなんて、何とも思っていないだろうけど」

所詮、子供達の良い遊び相手ぐらいにしか思われていないのだろう。

今の関係があまりにも居心地が良くて、あと一歩踏み込む勇気が持てないのは俺のせいではあるけれど、いい加減男として意識されないのも辛いものがある。