「実は先輩方にご相談がありまして……」
関谷さんはそう言って、ランチ用の小型バッグの中からチラシを取り出した。
「これ、行きませんか?」
「わあ、美味しそう!」
私と椿は一緒になって歓声を上げた。
折りたたんだチラシを開いてみるなり、目に飛び込んできたのは色とりどりの美しいケーキだった。
もちろん写真なので実際に食べることはできないが、計算された配色や、つやつやとしたコーティングは技術の確かさを示すもので、口に入れずとも味を予想することができた。
「私、このパティシエさんのファンなんです」
関谷さんは感激する私達を見て、にこにこと嬉しそうに微笑んだ。
「同期の子は皆、用事があって来られないっていうので、良かったら一緒に行きませんか?割引券をもらったんです」
高級ホテルのケーキバイキングは薄給のOLには時として、スタイル維持に対する努力を放棄しかねない代物だった。