(通りで育ちが良いはずだわ……)

ふとした時に見せる品の良い仕草や、明晰な頭脳はすべて英才教育のたまものだったのだ。

普通のサラリーマンにしておくのはもったいないとは思っていたが、まさか本物のサラブレッドだったとは。

(あ……れ……?)

頭の回転の遅い私もさすがにおかしいと思い始める。

(どうして鈴木くんは家を出たのかしら?)

会社での働きぶりも申し分ない鈴木くんのことだから、政治家としての素質も十分に兼ね備えていただろうに、秘書さんの口ぶりからすると自ら家を出て行ったことになる。

ここで更に疑問が生じてくる。

……長らく家を空けていた彼に秘書さんは何の話しがあったというのだろうか。