「鈴木くんのお父様って秘書が必要な役職の方だったの?」

この家に出入りするようになってから随分と長いのに、家族の話を聞いたのは初めてのことだった。

「そうだよ。ああいう類のね」

鈴木くんが指さしたのはたまたまつけっぱなしになっていたテレビの画面で、そこには日本の政治の中枢である国会議事堂が映し出されていた。

「……もしかして議員さんなの?」

鈴木くんは私の問いかけに答えなかった。

……答えたくなかったのかもしれない。

「取り皿って1枚で良いの?」

「あ……うん……」

思わぬ事実が判明して、尋ねた本人である私の方がよっぽど動揺していた。