死が二人を分かつとも


「だ、大丈夫ですか、やっさん!」

「お前が真っ先に心配するのか。おかげで、大丈夫じゃなくなった」

近寄るコウモリを邪険にする彼が、私のもとに来る。

「そよ香、大丈夫か?」

そう言って、手を差し出す彼を見て、泣きたくなった。

ところどころに傷がある。
あの水飛沫を受けた箇所が火傷したように赤くなっていた。

空気に触れるだけでひりつくほどの傷。

それだけではなく、“犬”の牙の囮となった左腕もひどかった。

やっぱり、血が出ている。
傷の上から火でも当てられたかのように爛れている。

「そよ香……、泣くなよ。お前に怪我はないんだろ?」

「や、弥代くんが、痛い思いしてちゃ……!」

「怪我しないって約束破ったの怒ってるのか?悪かった、考えが安易だった。ブレザーなら、防水加工しているから少しは持つかと思ったんだけどーーやっぱ、たかが知れているな。ま、でも、そんな大したことじゃないし、左腕だから。利き手無事なら武器も持てる。唾つけとけば、治るーー」

彼の言葉が途切れたのは、私が抱きついたせいだ。

守ってもらうことが、こんなにも辛いことだなんて。

だからといって、私には彼を守れない。
それが、とても歯がゆくて。

「ごめん、ごめっ、や、弥代く……!ごめんなさっ、い」

泣いてしまう。

傷ついているのは彼の方。一瞬でも怯えてしまった私を軽蔑すべきなのに、彼は私を突き放さなかった。

「謝るなよ。当たり前のこと、しただけだし。お前に泣かれるのが、一番きつい」