死が二人を分かつとも


「一人暮らしのアパートかぁ。そういや、そよそよの家の近くらしいじゃん。どんなとこなのぉ?」

話を振られて、肩が跳ねる。
動揺を気取られないよう、唐揚げを口にして間を置く。

「う、ん……。普通のアパートだったような。二階建ての」

「中は?中は?」

「流石にそこまでは、知らないよー」

誤魔化すが、ワンルームの綺麗な部屋だと、頭で思い返す。

弥代くんと付き合ってから、二ヶ月以上は経つ。外でデートしないから、彼と会う時は必ず彼のアパートで。

私の家は家族がいるから、除外しているけど。

毎回、行く度に綺麗だと思える部屋。
物が少ないのが一番の要因だけど、埃一つないのは彼の努力だろう。

そこで週に何回か。付き合った当初は周りの目もあるから、週に一回あるかないかだったけど。

『俺たち、付き合っているんだよな?周りを気にしてんのはそよ香の性格上分かっているつもりだけど。もっと会えないか?』

私たちの関係は、秘密にしてほしい。

そんな私のワガママを聞いてくれた彼のささやかな望み。週三回以上は彼のアパートで落ち合う約束になったけど。

「あ、あの、春野さんって人いますか!」

大声で呼ばれたものだから、私だけでなく、みんなして声の主に視線を向ける。

教室の入り口。身長が低い女子、胸元に『1ーC』と書かれたピンバッチをつけている。

由紀に、知り合い?と聞かれたけど、首を振る。一方、真奈は感づいたように、私に耳打ちしてきた。