死が二人を分かつとも


「つか、そよそよはぁ、告白しないの?」

真奈の言葉で締め付けられた心が、破裂しそうになる。

「う、うん。私は……いい、かな」

「そよ香も告ったらいいのに。掛川くんと付き合えるなんて、高校生活バラ色だと思うよん」

「わ、私も多分、断られるの目に見えてるし……」

彼に告白する女子が後を絶たないのは、みんなが知っていることだった。

告白される度に、『ずっと好きな子がいるから』断り常套句が出来るほどに。

断られる人の数が多いほど、それを聞いた女子たちが、『周りがやっているなら私も』と意気込み告白する。

赤信号、みんなで渡れば怖くない。ではないけど、掛川弥代くんへの告白は、青春のイベントから朝の挨拶のような恒例化となっている。

昼休みにこうして必ず、『昨日はあの子が告白した』との話題が始まるほどに。

「お前らさぁ、掛川にフられて傷心してんなら、俺が相手すんけど?」

真奈から投げつけられたフィルムをゴミ箱に入れつつ寄ってきた男子は、真奈曰わくチャラ男のムードメーカたる岸谷くんだ。


金に染めた髪は、先生に注意されても変わらない。どっこいしょと、言いながら無人の席を拝借し、私たちの話に混ざる。

「ど?俺とさ」

「岸谷ぃ、鏡見てからきなよ」

「後、毎日牛乳5リットル飲めばいいと思うよん」

「人のコンプレックスを遠回しに指摘すんなってーの!」

辛辣な二人に、私は苦笑しかない。

「はあ、俺も告白されてぇ。掛川の何がいいんだよー。おんなじ男じゃん!」

「格が違う」

「もっと分かりやすく教えてくれっ」

「分かりやすくってもぉ。んー、やっぱ、レインのボーカルに似てイケメンだからだねぇ。後、クールな性格」

「大人っぽいのがいい。高校生なのに、一人暮らしして、自立してるというか」

「高校生で一人暮らしとかーー確か、掛川は県外からわざわざこの高校に入学したんだろ?知名度も何もない、普通のここにさぁ。怪しくね?中学時代にとんでもないことして、親から絶縁されて、遠くに飛ばされたとか?」

「影あるイケメンかぁ」

「ありだねん」

イケメンなら何でもいいんかと、打ちひしがれる岸谷くんだった。