死が二人を分かつとも


ーー

「ねえ、そよそよー!そよそよってば!」


「えっ、わわっ」

寝ぼけ状態にデコピンを食らわされた。
後ろにのけぞり、危うく椅子ごと倒れそうになる。

心臓バクバクさせていれば、デコピンした彼女も同じ心境たる顔をしている。

「ごめっ、そよそよ!なんかぼーっとしてるみたいだったからぁ!」

両手合わせて謝る彼女ーー今日も触りたくなるサラサラストレートの友人、真奈(まな)に、いいよと言っておく。

心臓に平静を与えつつ、辺りを眺める。

「雨、降っていなかった?」

そう聞けば、「はあ?」と言われてしまう、セミがけたたましく鳴く晴天ぶりが、教室の窓から窺える。

自分でも何聞いているんだろうと、頬が赤くなっていくのを自覚する。

いつもの昼休みの光景だろう。
教室で、友人たちとお弁当を食べる。

うちのクラスは、みんなして仲がいいもんだから、自然と大所帯で席を囲む形になる。

「あちゃー、本気で寝ぼけてんねぇ、そよそよ」

呆れ顔で、目の前にいる真奈は中学からの親友。

「そうして、お弁当のメイン一つなくなっても気づかないほどの寝坊助だねん」

口をもぐもぐさせているショートカットの彼女、由紀(ゆき)は真奈の部活仲間で、真奈と話している内に自然と仲良くなった友人だ。

「あっ、唐揚げ一つない!」

「さて、どこ行ったんだろう」

「今ちょうど、ゆっきーが飲み込んだとこだねぇ」

時すでに遅しな私の唐揚げ。
仕方がないかと、諦める。

同じ教室にいた男子が、俺も唐揚げーと言ったものだから、真奈がサンドイッチのフィルムを投げつけたのはさておき。

「つか、話の続きぃ。昨日ね、Cクラスの女子が、掛川くんに告ったらしいよぅ」

改める素振りで、机に肘を立てる真奈。
ニヤニヤ顔は、野次馬のそれだった。

「で?で?結果は?」

「カップル成立したら、即LINEでみんなに回してるってぇ」

「なに?またお得意の、『好きな人がいるから』断り?入学してから、今まで色んな奴から告られてんのに、下手な鉄砲数打っても当たりなしじゃーん!」

「下手な鉄砲あたりの意味がよく分かんないけどぉ。一応、あんたもあたしも告白してんだからね!下手なとか、なんか貶されてる感じがするんだけどぉ」

真奈得意のデコピンを大仰に受ける由紀。彼女たちの会話一つで、私は心を締め付けられている思いとなった。