「じゃあ、弥代くんは?」
同じ境遇たる弥代くんの死因。
こちらは隠し立てする気はないらしく、彼は私と目を合わせた。
「自殺した。そよ香が死んだから、俺も死んだんだ」
一瞬、意味を捉えかねた。
真実が、あまりにも重すぎて。
「自殺っすか。なら、地獄にいんのも分かりますね。殺人した奴は地獄行き。自分を殺した殺人者も、この場所に落ちますよ」
合点行ったコウモリ、弥代くんさえも、「やっぱりここは地獄か」と、納得行ったようだけどーー私は、言葉が出なかった。
「あ、でもそよ香さんは間違いですよ!ここに来たのは間違い!」
「……」
勘違いのフォローをするコウモリ。感づいた弥代くんは、無言となっている。
「私が死んだからって、そんな……」
ようやっと声を振り絞っても、月並みの台詞しか出ない。
「俺と一緒じゃ、嫌か?」
「ちがっ。そうじゃなくて……!」
「“それだけ”、本気だったんだ」
無意識に大きくなった声量が、深みある声に遮られる。
「後追いを、そよ香が望んでいないことは分かっていた。俺には生きてほしいことも、分かりきっていた。だからこれは、残された側のわがままだ。死後の世界だなんて、あると思いもしなかったけど、現実(あっち)じゃ、もうそよ香に会えない。だから死後の世界(こっち)なら、会えるって、自分の命を賭けてでも試した。全部、お前とまた会うために」
先とは違う意味で、言葉が出なかった。
残された側のわがまま。
残していった方のわがままなら、こちらなどに来てほしくなかった。
相反する望みは、どちらも崩れないだろう。けれども、私は弥代くんの名を呼んだ。
助けてと、つまりは会いたいと。
残していった方のわがままとは、真実“これ”なんじゃないのだろうか。


