その慌てぶりに、かかしの足も動いたけどーー右足が出た状態で固まってしまう。
音がした。
土を踏む足音。
けれども、砂利もないこの土で足音が出るなんておかしい。私みたく走ればーー力強く踏み込むなら足音もでるかも知れないけど。
「なに?」
振り返る。
何か、いる。
走ってもない、むしろ、ゆっくりとした足音の持ち主は紛れもなく私に近づいている。
奇怪な足音だった。
右と左で“ズレている”ような。
足が不自由な人を想像していれば。
ーー想像を絶するモノが、そこにいた。
見ただけで鳥肌が立つ姿。
人型の出来損ない。それでも人らしくあろうとするそれには、頭があった。
にたりと笑ってみせる顔があった。
朽ちた肉体は枯れ木のそれ。
立っているのもままならないあげく、それには右足がなかった。
かかしの足とは正にあれ。バランスの悪い体を歩かせるために、棒を持っている。
小さい子がやる『けんけん遊び』よりも危なっかしい移動方法。飛び跳ね、着地する度に体の一部がひしゃげていく。
朽ちかけの左足が、膝から“潰れた”。上半身の重みで、粘土のように太ももがふくらはぎを潰す。
倒れた化け物。なのに、それでも。


