「そよ香が分かっていないのが、分かった」
獲物を見る獣のそれと、同じだった。
「やし……っ」
押し倒される。
腕を掴まれ、拘束された。
「分かってないよ、お前。これだけ言ってんのに。どうしてだ?俺だけを見て、俺のそばにいて、離れるな、逃げるな。言葉にもしているのに、なんで分からない?言葉じゃ足りないんなら、行動で示すしかないか」
「い、たっ」
「お前のためだけを思ってやってきたのに、それも間違っていたのか。お前の意思を無視してでも、俺のやりたいようにすれば良かったのか。やってもしなくても、お前は泣くんだもんなぁ。なら、いっそのことーー」
幾多の命を脅かしてきた斧。
私を守るために使われた斧が、こちらに向いている。
「ここじゃ、死なない。さっきお前を襲った奴、細切れにしても生きていたから、実証済みだ。“手足を切り落としても、生きていられる”」
「ーー」
彼のしたいことが、容易に想像出来た。
追いかけても逃げるなら、もうそれしか方法がない。
「お前に痛い思いをさせるんだ。俺も、それ以上の痛みを体に作る。手足はお前を守るために必要だから、内臓全部引きずり出す。だから、そよ香ーー」
鎌首をもたげるように、構えられる斧。
言語を絶するほど、先のことを肌から感じてしまった。
振り下ろされるーー、寸で。


